【金沢市内】
「武士の家計簿」は、磯田道史氏が発掘した金沢藩士猪山家文書の入払帳のことで、猪山信之(祖父)、直之(父)、成之(子)の3代にわたる天保13年(1842)から明治12年(1879)までの約37年間、日常の収支から冠婚葬祭の費用までを詳細に記録したものです。
これは、ただの古文書ではなく、猪山信之が、ソロバンの能力を買われ出世するが、江戸と金沢の二重生活を強いられ、先祖の勲功で給与が決まるという当時の実力主義とは程遠いシステムと身分費用の増大から生じた借財の山を、息子の直之が一念発起して家財道具を売り払い、債権者と交渉して借金の整理に成功するという話で、実話らしい、物語からは幕末から明治維新の社会の変動、さらには猪山家の生活やその変遷が浮き彫にされています。
(安政年間の犀川界隈)
著者磯田道史氏によると、「古文書を調べるにつれて、この家族の経験した歴史が次第に浮かび上がってきた。驚いたことに、猪山家は幕末から明治・大正の時点で、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題、利権と収賄、マスコミ被害など、現在の我々が直面しているような問題をすべて経験していて、すさまし社会経済の変動を生き抜いた「ある家族の生活の歴史」が缶詰のように封じ込められていたのである。」と書かれています。
(猪山一族の墓がある極楽寺)
前回、御算用場跡を書き、その時、知人から「ポプラ」を掲載したらと、猪山家を書くことを勧められ、数年前、本も読み映画も見たので、ついついその気になって書こうと思い、2冊の本を読み返しました。またまた嵌り、よくよく考えたら下手な解説を書いても始まらないこと自覚しました。
(興味のある方は是非お読み戴ければ思います。面白いョ・・・。)
武士の家計簿
「加賀藩御算用者」の幕末維新
磯田道史著 発行所株式会社新潮社 2003年4月10日発行
加賀藩御算用者
猪山直之日記
石崎建治著 発行所時鐘舎 2010年10月25日発行
(仕出しを取った大野屋が有った界隈)
(亀沢町のお菓子屋や薬屋の記述あり)
(成之が書物・手習に行くといった宝来寺(小橋菅原神社)跡)
それで、金沢の観光ボランティアガイドらしく、2冊に出てくる金沢の猪山家所縁の地を写真で紹介することにします。
明治維新金沢の士族が、何を考え、どのように生きたか!!再度読み終え、益々金沢の明治維新に興味がかき立てられました。