【金沢市内】
今はあまり聞かなくなった主に女性が話す“金沢言葉”の本質は、「優しい人間関係」「信頼の相づち」「えん曲な物言い」だという学者がいます。いうまでもなく“金沢言葉”は、何時ごろから話されてきたのかは定かではありませんが、おそらく一向一揆より、ずう~と以前か・・・?根強く生き残った言葉のようです。
藩政期以後は、人口密度が高く、自然も美しい狭く箱庭のような土地で、それに加えて、大切に育まれた御能や伝統工芸などの伝統文化が、市民の生活感情に染み、人々が交わり、もまれ、練り上げられたことより生まれたもので、相手を思いやるこまやかな言葉使いや格調高い物言いは、これからも伝統文化と共に金沢が永く継承していくべき貴重の文化の一つのように思います。
(最近の金沢はイベントがあふれています。)
金沢では、来年の春の新幹線の乗り入れをチャンスと見て、行政も民間も、かってない勢いで果敢に文化活動が盛り上がっています。今のところは、客観的に見ても、全国的においても独特な町だと思われます。しかし将来、他の都府県との交流機会が多くなれば、素敵なことや楽しいことも多くなり、観光客も増え経済効果も上昇することは確実といわれていますが、その反面、金沢らしさも薄まり、新幹線の通る単なる北陸の一地方都市金沢に成り下がっていることも有り得ます。
先日、九州からの若い女性と話す機会があり、金沢で好きなことはと聞くと“金沢言葉”の“フワ~とした優しさ”だとおっしゃいました。よく聞くと旦那様が金沢の人だそうで、さも有らんですが、それにしてもちゃんと本質を捉えているように思えました。
≪優しい人間関係≫
金沢言葉に他人やお客さんを「お人さん」という美しい言い回しがあります。大学の先生の解説では、人に丁寧な気持ちを表す「お」つけて、「ひと」に尊敬の「さん」をつけ、対人関係に二重のクッションを設け柔らかな当りにしいることを上げられています。、丁寧語の「お」と尊敬語の「さん」は、他の地方にない第三者を客観化しない親しみと優しさが伝わり「金沢には他人がいない。」という金沢の優しい人間関係を象徴する言葉になっているといわれています。
≪信頼の相づち≫
「ほうや、ほうや、ほうやとこと。」“ほうや”は話し相手の話を新鮮に受け取り、感動した時の表現で、念を押すように続けるのは、話し相手に信頼感と共感を、かつ穏やかで金沢らしくのんびりとフワ~とした響きは、相手に不信感を抱かせない温かさすら感じさせるとか、他に消極的な表現ですが「そうけ、そうけ、そうですけ。」という繰り返す相づちなど多数・・・。
≪えん曲な物言い≫
人間関係のこまやかな金沢では、直接的な物言いを避け、何事もえん曲に表現し、一番訴えたいことを暗示で伝えようとします。一寸まわりくどいようですが、相手を傷つけない配慮が伺えるもので、「・・・らしい」と柔らかく包んだ間接的で遠回しの表現は、金沢らしさの象徴のように思えるといっています。
いずれにしても“金沢言葉”は相手に対する配慮から生じた言葉のようで、もったいぶって愚ってまわって、ずいぶんとのんびりですが、思うに“金沢言葉”の継承は、その心も含めて、これからの金沢の独自性を保ち続けるためのキーワードのように思えてきます。
もう少し勉強して、具体的に書いてみたくなりました。それにしても、これらの金沢言葉は主に“女言葉”にいえるもので、私などが話す”男言葉“は、虚勢からくるのか、優しく素直な表現というよりむしろ“キッタナイ”といわれる金沢弁を使いたがる人が多いように思います。どうもそれは単に育ちのせいだけではなさそうです・・・。
(いつかつづく)
参考文献:「加賀城下町の言葉」島田昌彦著、1998・1能登印刷出版部発行など