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“五人扶持の松”が見える天神町

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【鈴見橋→常盤橋】
昨年暮れ、田井菅原神社の「鏡餅」を見せて頂いた帰り道、雪が深々と降りしきる天神町で、ふと、鉛色の空を見上げると、目の前に雪吊りの”五人扶持の松”が堂々と突っ立っていました。


市民が見つける金沢再発見

(去年の暮れ、工事現場の先に五人扶持の松が見えた。)

今までにも天神町から”五人扶持の松”を何度か見ましたが、何か松林のようにしか見へなかったのに、雪吊りがあると存在感がまったく違って見えました。雪の降らない日にと思っていましたが、先日、「杜の里」に行く用があり、馬坂を下り、天神町に出たころで、降ってきました。

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(馬坂)

暮れから今までいい天気も有ったのに・・・・と思いながらも12月には気付かなかった、”五人扶持の松”の真下の家と家の間の空地に入ると、目前に急傾斜地の崩壊対策の工事で出来た四角い模様に雪が積もって何とも美しく、それと崖上の松の雪吊りがマッチして、新しい発見でした。


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(急傾斜地崩壊対策で工事が施された崖)


(実は、私は近くに住んでいながら、お庭から“五人扶持の松”を拝見した事がありません。何時か見たいと思っていますが・・・。)

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(青空だったらもっと美しいかも・・・・2月の五人扶持の松)


≪”五人扶持の松”≫
藩政期、与力の吉川牛右衛門(130石)の庭の松で、幕末には、すでに有名で、13代藩主斉泰公が現在の兼六園のところに移植を望んだものの、余りにも枝先が長いために沿道の家150軒の移転が必要と分り計画は頓挫したといいます。


(現在の兼六園にある旭桜の初代は、斉泰公の所望により、長町の村井家から桜の移動に500人の人夫で50軒が壊されたと伝えられています。)


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(五人扶持の松のある北陸大学の林鐘庭)


当時の年寄奥村秀実(17,000石)が斉泰公に民の犠牲による移植であると進言。斉泰公はあっさり了解し、「天下に得難い松であるから、何時までも必ず事なく心して手入れを致すべし」とし、その維持費として五人扶持(1人扶持は1人1日玄米5合)を与えたということから”五人扶持の松”または”知行松”といわれるようになったと伝えられています。


この松は樹齢400年とも450年といわれ女松で、高さ7m、枝振りは南北24m、東西19mいわれています。松一株で100坪。この地に住んでいた与力が、盆栽だったものを庭に植えて丹精して育てているうちにどんどん立派になったといわれています。


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(元総理吉田茂氏)

お屋敷は、現在北陸大学教養別館の「林鐘庭」で、元は大学の創設者元参議院議員林屋亀次郎氏の邸宅でした。林屋邸時代、たびたび茶会が催され、吉田茂氏から中曽根康弘氏まで歴代10人の総理が来訪したといわれ、吉田茂氏は「移植できるもなら欲しい、とても移植できるものではないから断念せざるをえない。」と残念がったという話が伝えられています。


(10人の歴代総理は、吉田 茂氏、芦田 均氏、岸 信介氏、池田 勇人氏、佐藤 栄作氏、田中 角栄氏、三木 武夫氏、福田 赳夫氏、大平 正芳氏、中曽根 康弘氏)



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(林鐘庭の後に見えるビルは金沢大学病院)

この地は、藩政期、与力の武家地で、現在の金沢大学病院も含めて与力町といいました。お屋敷は、明治の末に医師の邸宅になりました。設計は、日本の近代建築における異色の建築家で築地本願寺や湯島聖堂、平安神宮を設計した伊東忠太氏によるものといわれ、昭和に入り、林屋亀次郎氏が取得し、林鐘庵という茶室と林鐘庭という露地を整えました。


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(天神町の通り①)


≪天神町≫
寛永12年(1635)に遷座した田井天神社(椿原天満宮)に因んで付けられた町名です。文化8年(1811)の金沢町名帳によると、上天神町の家数は118軒、下天神町の家数は55軒で、少し数字が合いませんが、上下の天神町を合わせて、町人は104軒、あとは武士、足軽、小者などが49軒だったと記されています。


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(天神町の通り②)
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(こまちなみ保存地区天神町の案内板)


明治4年(1871)には、上下の天神町に加え金浦町、天神社門前、宝円寺門前を合わせ、東より天神町1丁目~4丁目までに区画され、昭和11年(1936)までは、道幅2間弱(3,6m)。道路拡張事業により、北側の家々が一斉に後退し現在の幅員になりました。


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(天神町の天満宮)


参考文献:平凡社「石川県の地名」ほか


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