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Channel: 市民が見つける金沢再発見
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明治維新の金沢①

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【金沢市内】
藩政中期から後期にかけて、日本の人口は3000万人~3200万人だといわれていますが、その内武士階級は約6%だといわれています。金沢の町は、その武士階級が約50%と国内の他の城下町と比べてみても極めて特異な人口構成の町でした。今回から明治維新を迎え、武士階級が約半分という町だからこその混乱ぶりを、昔、書かれたものから抜書きしながら検証します。


(明治の日本の人口:明治5年(1872)1月29日 (1872年3月8日) 33,110,825人壬申戸籍 (全身分対象) 男16,796,158 人 女16,314,667人)



(夕暮れ、NO~、金沢の夜明けです)


藩政期。江戸、京都、大坂の三都を除くと日本最大の人口を誇った金沢でした。明治4年(1871)2月金沢の戸数24,744戸・人口123,363人で、その内士族4932戸2万6028人、卒族(後に士族に含まれた)4607戸2万6888人、平民1万4907戸6万8810人、元神官39戸139人、寺院259戸1032人、御預人466人で士族、卒族で約43%でした。


(藩政期金沢藩(加賀藩)では、金沢の人口調査は数え15歳未満は含めていなく、その結果、正確な人口が分かりませんが、推定で元禄時代すでに10万人を超えていたといわれ、幕末には12万人以上であったといいます。実質的には町会所支配以外の奉公人(村支配の近郷からの奉公人)などを含めると20万人は超えていたという説もあります。)



(金沢の青空)


明治前期から中期、金沢の町は著しく衰退し、明治20年代(1887)には10万人を割り、明治30年(1897)には81,352人まで減少してしまいました。しかし、翌年、鉄道の北陸本線開通当りから増加に転じ、大正7年(1918)には15万人、昭和18年(1943)には20万人を超え、町村合併もあり昭和55年(1980)には417,684人になりました。

(現在462,470万人、全国34番目 2014年2月1日)




(金沢のおんな川、おとこ川)


(明治4年(1871)の人口は、まだ、東京、大阪、京都に次ぐ全国4番目でしたが、廃藩置県により国の体制の移行にともない、その年の秋から約1年間、県庁が石川郡の美川に置かれたことなどから金沢の衰退が始まり、金沢の人口が名古屋に抜かれるのは、明治8年(1875)~明治10年(1877)頃で、明治12年(1879)名古屋の人口は111,783人、金沢は107,876人でした。その後、明治20年(1887)には、横浜・神戸の両都市に抜かれ、明治27年(1894)には、ついに広島にも抜かれ、国内第8の都市に転落していきます。)



(金沢城の石垣)


明治18年5月の京都の日の出新聞には、北越より帰来人の談として「石川県の疲弊困窮は実に名状すべかざるものあり、輪島の漆器、九谷陶器などの工芸品は全然さばけず金沢の人口95,000人の十分の一は其の日の暮らしにも差しつかえる貧民なり、近来乞食の数を増し毎朝群をなし横行、其の惨状見るに忍びず」と報じているそうです。


(金沢城の菱櫓)


明治30年(1897)6月。「日本之下層社会」の著者として有名な横山源之助は金沢を訪れ、「金沢瞥見記(べっけんき)」という小文を「毎日新聞」に寄せています。その中で、横山は「曰く巡査、曰く芸娼妓、曰く小学校教員、即ち是を金沢の三物産なり」と述べています。


(これは当時一般的な評価だったようで、「石川県史」(第四編)も出典は明示していませんが、士族の「青年の男子は他県に赴きて巡査となり教師となり、妙齢の女子は辺鄙(へんぴ)に流浪して芸妓になり娼婦となるもの多い」とおなじように伝えています。)




(長町武家屋敷界隈)


百万石という大藩であったために抱えていた武士(卒族も含め)も約1万5000人と数も多く、藩政期、国内の武士数は約34万人に対し明治の軍隊は西南戦争時約4万人、日清戦争時約8万人と武士の再就職は難しく、金沢では失業者が続出します。金沢では失業者が増え、なれない武士の商法で、彼らにとって悲喜こもごもの明治維新になり、その大半が没落していったといいます。



(前田家の家紋、剣梅鉢)


次回からは、何回か前に書いた磯田道史原作のベストセラー「武士の家計簿」“加賀藩御算用者の幕末維新”には当時のことが、かなり具体的に書かれているので、それも含めて当時の武士の様子を拾ってみます。



(つづく)


参考文献:「加賀藩史料」「石川県史」[武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新]」「加賀藩御算用者猪山直之日記」など


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