【金沢市・金沢学生のまち市民交流館】
報告が遅れましたが、先日、金沢学生のまち市民交流館交流ホールで、元金沢市長の山出保氏と建築家の水野一郎氏による対談“「金沢らしさ」を守るまちづくりと次世代への期待”が開催されたので参加させて戴きました。
主催は“「金沢の気骨」を読む会実行委員会”という若手市民のグループが、質の高いこれからのまちづくりを目指し、昨年(2013)9回にわたり山出氏が著した「金沢の気骨」を題材に、山出氏を囲んで行われた論点提起や議論をまとめた報告書の発行を機会に開催されたものだそうです。
(対談は、北陸新幹線開業以後のまちづくりの議論を深めるために、方法論から哲学、さらに次世代への期待も含めた約2時間。対談の相手は、金沢のまちづくりの表現者の1人として山出氏と関わった著名な建築家水野氏との息のあった掛け合いで、内容も素晴らしいものでしたが、絶妙の間が時間を忘れさせ、楽しいだけでなく、私にとって、さらなる郷土への思いを駆り立てさせられる時間になりました。)
(夜の広坂・香林坊)
(会場の金沢学生のまち市民街交流館・旧佐野家)
最近は、夕食を食べると直ぐに寝てしまい、夜の外出が少し無理になってきましたが、何しろ山出氏のお話だというので、寝だめして、夕食抜き、しかも、雪で1日外出なしで運動不足が気になって、物好きの声を後ろに雪の町を歩いて参加させて戴きました。山出氏は、お付き合いこそ有りませんが、仕事を止めて、やることがなくなって、ある意味喜んでいた反面、目的を見失っていた私の老後に火を点けた人で、昔から自分勝手で気ままな私をニワカ郷土愛者にしボランティア活動の道を開いて下さったと一方的に思っている恩ある人です。
山出保さんの「金沢の気骨」市民が見つける金沢再発見
http://ameblo.jp/kanazawa-saihakken/entry-11521372792.html
さて、対談の様子ですが、お2人の取って置きの昔話や金沢の建物にまつわる裏話から「金沢らしさ」「革新と伝統」「本物」「コミニュティ」「次世代への期待」など、金沢のまちづくりの経緯や理念に関して、文章では書き切れない、心が伝わる深い話が盛りだくさんで充実した時間でした。
(報告書)
(白板の本物論・・・)
対談の内容については、330ページにまとめられた報告書に沿うもので、報告書は、まだ読み終わっていませんが、私の知る限りの「金沢本」のなかでも秀逸なもののように思へます。少し専門的で、本物論では真正性オーセェンティサァテイ(Authenticity)やジェントリフィケーション(Gentrification)、革新と伝統論、金沢らしさなどでも、私の理解力や読解力ではまだまだ及びませんが、この報告書は、参加者だけが知っていればいいというものではなく、金沢市民に伝えたいことがいっぱい詰まったもののように思へました。
そして、次世代への期待については、一世代が約30年とすれば、この読む会に参加されたみなさんは私から見れば次世代であり、彼らがこれだけ熱い思いで語っているのですから、彼らの子ども世代には必ず伝わると思いました。
(読む会、対談ともに他所から金沢に移り住んだ人が意外と多いように思います。金沢にきた動機は様々でしょうが、それでもこの場に来るという事は、金沢の何かに惹かれるものがあるからだと思われます。彼らには地元に住んでいるものには見えない金沢が見えるはずです。そして彼らの目と思いが、私たち金沢生まれ者が他所の方から金沢の良さを気づかされたように、やがて金沢の子ども達をゆさぶることになるでしょう。期待します。)
(12月15日の北国新聞朝刊記事)
≪観光ガイドネタになりそうな話≫
倉庫の活用研究から生まれた芸術村(五木寛之の発言:芝居小屋は小さくて、汚くて立見が出来るところがよい。山出氏)(モルタルやコンクリートをまくるとその下はレンガだった。他にも金沢は江戸、明治、大正、昭和と重層しているのがおもしろい・・・水野氏)
金沢駅の鼓門(高名な建築家が、町にはフランスのように門が幾つもあったほうが良いといった。山出氏)(鼓門は、初めから鼓を意識していなかったが、木が立っているだけでは面白くないので捻りを入れたのを市民が鼓門と名付けたらしい。水野氏)
金沢駅のもてなしドーム(駅の建設にあたりアンケートをとると、兼六園のミニチュアや金沢の瓦を配せという意見が多かったが、瓦ではなく傘になった。しかもガラス張りで、ビニール傘のようになったが、実に金沢らしさ・・・。また導線は駅からそのまま真っ直ぐ歩いて外に出る。水野氏)等々
多くのテーマで語られた“「金沢の気骨」を読む会の報告書”も“対談”も、内容が詰まっていて盛り沢山。一寸やそっとで消化出来そうもありませんが、これからコツコツと読みながら気づいたことを書く楽しみを戴きました。今回は、この対談でも述べられ、以前、私どもの記念誌にも寄稿戴いた山出氏の「金沢らしさ」を記させて戴き一区切りにします。
(犀川と用水)
≪山出氏がおっしゃる金沢らしさ≫
一つは、「まちのすべてがヒューマンスケール」であることだと思います。まちなかに広見とか境内とかの小空間があります。道路は狭く、国道ですら幅員は22メートル、そこをミニバスの「ふらっとバス」が走ります。旧市域は歩く範囲。これらがフレンドリー、親しさの背景です。
二つは、「緑と水の癒し」が「金沢らしさ」の一つでしょう。しかも、この緑と水がまちなかにあって、だからこそ金沢は、四季の移ろいが鮮やかで、住む人、訪ねる人の心が癒されるのです。
三つは、「金沢はあらゆる面で、ハイグレード、ハイクオリティ、ブランドイメージ」を追い求めるまちだと思います。この背景は、金沢が武家社会であったこと、武家社会は格式社会であったことと無縁ではありますまい。また、学都であること、美術工芸王国であることも品質にこだわるバックグランドでしょう。金沢は「いい加減なこと、生半可なこと」の許されないまちだと心得ます。そして、このことが市民の誇りにもつながっているのです。
四つとして「もてなし、思いやりの心」が挙げられます。玄関の打ち水、雪道での譲り合い、お裾わけなどの心の優しさが、金沢の自然、歴史、文化、市民性のなかから育まれてきたのでしょう。
対談『金沢の気骨』「金沢らしさ」を守るまちづくりと次世代への期待
山出保(前金沢市長)×水野一郎(建築家)
コーディネーター 内田奈芳美(埼玉大学経済学部准教授)
日時2014年12月14日(日)18:00~19:45(開場17:45~)
会場 金沢学生のまち市民交流館 交流ホール(石川県金沢市片町2丁目5番17号)
参考資料:「金沢の気骨」を読む会報告書2014年12月発行「まいどさんのあゆみ」2014年1月発行