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兼六園の金仏さん②

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【兼六園】
歳なのか、何かにつけて昔聞いた話が頭をもたげてきます。「公園の金仏さん」を書こうとあれこれ思いを巡らしていたら、50年ぐらい前、富山出身の友人との雑談の中に、祖父か曽祖父か忘れましたが「俺の爺さんが、日本武尊の銅像を造った!!」といっていたのを思い出しました。




(日本武尊銅像)


当時、余り関心もなく「ヘイ」とか「ホンマ」とかいって聞き流していたのか、すっかり忘れていました。八田健一氏の「百万石太平記・金仏さん」の記事に鋳造した7人の名前が書かれている中に彼と同じ苗字が2つあり、思い出したという次第です。



(千歳台より望む)

その文面には「鋳造は越中高岡町金屋町の藤田治三郎、吉野仁左衛門、小坂六助、金森長助、金森治助、藤田久平、金森吉郎の7人が分担して明治13年(1880)7月13日着工、10月19日竣工。その世話人は金沢栄町野村与平と高岡金屋町大浦三右衛門とあった。」と書かれています。

(やっぱホンマやったんや・・・!!50年ぶりの納得。)


(頭上にはカラスが・・・)

≪金仏さん、高岡から金沢へ≫
私の昔のメモに、日本武尊の銅像が高岡から運ばれた時の話が書かれています。出典までメモって無いので要約ですが、話は昭和62年(1987)市内の一市民が亡父の思い出話として書かれたもので、当時、筆者の父が県庁に勤め、銅像建立の責任者に選ばれ、高岡の工場から大八車を連ねて金沢に運ぶくだりが記されていました。


銅像を白布に巻き、責任者の父は赤い鉢巻きを巻き赤い采配を振り、木遣り音頭を歌い、30人の人夫が木遣りに合わせ「えんやえいや」と引き、運びますが、倶利伽羅の麓と森本そして大樋口と3度に渡り人夫が賃上げストライキを行ったそうです。


さすがの3度目には責任者の父は激怒し賃金を払い全員解雇し、近くの民家を起こし、ジャッキなどを借り急場を切りぬけ、無事に建立出来たのは、招魂祭当日の旭の昇る頃だったとか。と書かれていました。


(ほかメモには、銅像の前にある赤松は「手向けの松」といわれ左が西本願寺、右が東本願寺の門徒から手向けられたものだと記されています。)


(銅像の前の橋・火除けの龍彫刻)

(冬は橋に菰掛け・福田伊之助作)


≪金仏さんとカラス≫
10年ほど前、平成15年(2003)10月16日の北国新聞に日本武尊像は「カラス」が寄り付かないということが載っていました。その記事によるとこの像は、カラスを撃退する究極のカラスキラー金属で造られているのだそうです。


(カラスと銅像)


この日本武尊像は、明治13年(1880)の建立で、以来約130年間にわたり鳥が拠りつかない事に注目した当時の金沢大学理学部の広瀬幸雄教授が銅を分析した結果、この銅には、鉛と砒素(ひそ)が含まれている事を突き詰め、金属版を作り何度も実験を繰り返すことから発見したそうです。



(銅像に鳩が、こんな例外もいます。西川正一氏撮影)


10年前の記事ですが、特許を申請し、実用化へ改良を進めていると書かれています。今のところ実用化したとは聞きませんが、その記事には、広瀬幸雄教授がアメリカのハーバード大学で「ハト(鳥類)を寄せ付けない銅像の化学的考察」で「イグノーベル賞化学賞」を日本人として2人目に授賞したことが記されています。しかし、今、この大発明のその後についてはよく知りません・・・。


(「イグノーベル賞」とは、別名「愚かなノーベル賞」というらしく、ユーモアと独自性を兼ねた研究と開発に贈られるものだそうです。)


広瀬幸雄教授は、学生時代からカラスが寄り付かない銅像に気付いていたそうで、昭和63年(1988)から日本武尊銅像の修理の専門員として参加され、その時、銅像の一部を切り取り成分の分析する機会を得たとのことがこの発明に繋がったそうです。



カラス飛び交う、左は金沢城跡、右、兼六園)


あれから10年、日本武尊像には、今まで通りカラスは寄り付きませんが、今、兼六園、金沢城跡のカラスは減るどころ以前より多くなっているように思われます。10年後の今、毒といわれる砒素(ひそ)入り銅版の実用化は難しいのでしょうか・・・。


(広瀬教授は、カラスだけでなく、コーヒーについても詳しく、日本コーヒー文化学会副会長、およびコーヒーサイエンス委員会に所属し、大学でコーヒーについての講義も行ったという先生で、本業は「専門分野は材料破壊の理論計算と実験」、学位は工学博士だそうです。)



参考文献:「百万石太平記」八田健一著、石川県図書館協会昭和39年7月発行、北国新聞平成15年(2003)10月16日記事・他


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