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徽軫灯籠(ことじとうろう)①

【金沢・兼六園】
観光ボランティアガイドの私は、兼六園の徽軫灯籠(ことじとうろう)をご案内するとき、桂坂口から登り虎石の横にある曲水の小さな橋を渡ります。そこは徽軫灯籠(ことじとうろう)や虹橋(琴橋)、そして琴の弦と音にも喩えられる段落ちの小滝が眺められるポジションです。そこから見える風景は琴そのものを表現しているといわれ、兼六園でよくいわれる宿景だそうです。


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(よく写真が撮られるところ)
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(かすかに雪が残る灯籠と虹橋)


ここは兼六園で一番の人気のカメラスポットで、何時も人が集まり、周りに観光客が少ない時に限ります。何時も行列が絶えず、中々順番が回ってきませんし、写真を撮ろうとしても、他の人が写り込むんでしまいます。誰が仕切る分けではないのにみなさんはお行儀がよく順番待ちをしていて、時間や人ごみを気にするお客様のときは、ぐるりと回り、眺望台から振り向く位置から眺めます。


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(右がベストスペース)
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(桂坂口より右側に小さな橋があります)
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(琴の弦に喩えられる小滝と琴橋)


今更いうまでも有りませんが、徽軫灯籠は足が2股になっていて、琴の糸を支える琴柱(ことじ)に似ているのでその名が付いたといわれています。この灯籠は水面を照らすための雪見灯籠の変化といわれていますが、「菱形」や「濡鷺形(ぬれさぎがた)」の変形とする意見もあるそうです。


(「菱形」や「濡鷺形」といわれるのは、火袋や笠が六角菱灯籠に似ている?とか、また、火袋に鷺が刻まれていませんが、鷺が一本足でたっている姿を連想させる?ことらとか、何れも跡付けのように思われます。)


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(手入れを怠らない灯籠周辺)


この灯籠は、前にもいいましたが、今や兼六園だけでなく金沢のシンボルで、独特といわれるのは竿が変形で2脚。いずれも断面は方形で、虹橋から右側の脚が短い76cmで明治に入り折られたために切り石の上に乗せられています。元々は2脚とも高さ191cmで、一方が折られた形のまま現在に至っています。


(聞くところに寄ると、当時、県は財政難でこの灯籠を直せず、やもうえず片足を石の上に置いておいたのだといわれていますが、それがかえって珍しい灯籠だというので全国的に有名になったのだそうです。)


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(苔の白い石の右にあるのが折れて脚)

余談ですが、この灯籠は、昭和に入ってからも倒されます。当時、無料開放で深夜も通りぬけが出来たことからといわれていて、昭和37年から2代目となった昭和54年も合わせると計6回も倒されています。当時、金沢では直せないので、昭和44年に京都の西村金造氏が直され、現在ある2代目も昭和53年にその日本伝統工芸士認定の西村氏によって造られました。使われた石材は、初代と同様、香川の庵治石、岡山の北木御影石、大阪の御影石で造られています。


(しかし、初代は有料化された昭和51年以後4回も倒され、中でも昭和52年12月14日に、宝珠、笠、火袋、中台から脚まで、全ての部分が壊れ、のちほぼ修復されましたが、今は菰に包まれ管理事務所に保管されているそうです。)



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(四季の徽軫灯籠)

何故、2代目を作成する時、昔、製作された通りに造らなかったのか?とか、明治には財政難から壊れたものを元の形に直せなかったもので、有名になったからといって本来の形と違うものを造るのか?という批判も有ったとか、しかし、昔の絵図を見ると、脚の曲線には無理があり中台が重すぎるようで不安定に見えます。


昔の絵図では2脚とも水中にあったものが、1脚が陸にもたせたことで、脚の無理や中台の重すぎさが少なくなったようで、すっきりし、どっしりと無理なく自然に感じられます。


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(昔の絵図の徽軫灯籠、絵には琴柱と書かれているらしい・兼六園のパンフ)


(批判について、ガイドとしては「破調の美」だけを強調するのではなく、その不均等の美しさについて、その原因等も説明した上で、美的だからこのようになっているという解説も必要なのでは思ったりしています。)


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(2013年、霞ヶ池の清掃中の徽軫灯籠)


徽軫灯籠は、有名なだけに物語がいっぱいあって、1回では書ききれません。それにしても、霞ヶ池を背景に、かたわらの紅葉(モミジ)の古木と曲水に架かる虹橋が一体になった素敵な風景は、日々違う表情を見せ、私には、金沢で生まれ育ったことを実感させてくれます。


(つづく)


参考資料:「兼六園と徽軫灯籠」下郷稔著・平成18年金沢城と兼六園研究会資料他


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