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金沢の「うどん」

【金沢市】
先日、高校時代まで金沢で過ごし、その後、仕事などで金沢を離れ全国で勤務し、最後の勤務地が長野で、今も長野に住んでいる旧友が、北陸新幹線が開通し長野から1時間ばかりと便利になったこともあり、この秋、長野のお仲間と金沢の文学散歩を企画し、下見のため来沢されたので同行しました。


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(旧友が少年時代過ごした長町界隈)

今回は、金沢での室生犀星の足跡を辿る散策とかで、まめに資料を集め、読みこなしていて、地元に住む私の知らないことが、随分飛び出し勉強になりました。中でも芥川龍之介の来沢にまつわる話や後日談、軽井沢や堀辰雄の話など地元の資料では知りえない話に興味が沸きわずかな時間それも歩きながら話しあった楽しい一時でした。


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(犀星)


中学も同じクラスではなく、高校も違い道端ですれ違うとき声を掛け合ったくらいの仲で、今までも話をしたこともないのに、その日は、話が弾み犀星という共通の話題があるというだけとはいえない不思議な時間でした。互いに過ごした60年前の金沢がそうさせるのでしょうか、思い出話が郷土愛に火を点けたのか?歳のせいか?彼の魅力がそうさせたのか、別れがたく、お茶を飲みながら、お店の閉店まで話し込んでしまいました。


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(紫錦台中学校)


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(長町界隈)

その話は次の機会にしますが、今日の話は彼とお昼に食した金沢の「うどん」です。最近、「うどん」と言えば「丸亀」とか足で踏む讃岐系の「うどん」しか食っていませんが、彼はお昼に決めていたのか「うどん」にフワッと玉子が掛った「玉子とじうどん」が食いたいといいます。聞いた事はありますが、永年、金沢に住んでいて何時食べたか思い出さないくらいの「うどん」です。


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(今人気の四国のうどん)


幸い近くのデパートの地下に「うどんの加登長」があるので出かけました。メニューにあるか心配でしたが「玉子うどん」とあり、フワッと掛った「玉子とじうどん」かを確認して注文しました。若い頃「うどん屋」でアルバイトした経験から卵といえばそのまま割り込んだ「割り込みうどん」か「月見うどん」しか思い当たらなかったのです。


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(玉子とじうどん)


運ばれてきた「うどん」は、細めの麺に玉子が溶かれ麺に覆うように掛ったもので、永いこと金沢に住んでいるのに初めてかもと思いながら食しました。昔から半熟の卵を出汁に溶かして食べるのが好きで、このような「玉子うどん」は、やっぱり食べた記憶がありません。意外に美味しい!!とんでもなく熱い出汁にフウーフウーいいながら味は二の次、甘めのアツアツの出汁が懐かしさを誘います。

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(加登長のメニュー)


同時に盆休みに帰省した弟が加登長の「うどん」を食いたいといっていたのを思い出しました。今頃、気づいても後の祭りですが、弟は「うどん」の味だけでなく郷愁も味わいたかったのでしょうか?私は、空威張りの総領の甚六ですから「丸亀うどん」の方が美味いといって強引に連れて行ったのが頭をよぎります。また押し付けてしまったことに今更ながら反省しきりです。


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(デパートの地下、現在の加登長総本店)


金沢の「うどん」は、昔からある加登長、お多福、そして何軒かの屋号の違う“うどん屋さん”が提供する「うどん」のことで、今のように讃岐や丸亀などのうどんが町に登場する以前は、どの店も、ほぼ同じメニューで、味も私の一人合点ですが余り違いがなかったように思います。


(それは違うと反論されるお店もあると思いますが、金沢人好みか?どちらの店も少し柔らかめの麵と甘めの出汁をアツアツで出すのが特徴、中でも「稲荷うどん」は、今はどうか知りませんが、出汁にザラメの砂糖を入れ、少し煮込みさらに熱く甘くなっていました。)


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(総本店の店頭)


その金沢の「うどん」は、あの高度成長期、金沢に見切りつけ勉強や仕事にかこつけて金沢を離れた人々にとって、地元に住む人が思う以上に味を超えた思い込みがあるらしく、それぞれに思いや味覚に対する違いあるとしても、故郷の思うときに共通する味なのでしょう。


その味は、味覚や臭覚だけでなく、子供の頃、何かハレの日に、たま~に連れて行ってもらい、迷いに迷い選んだ家庭とは違う「店や」の味、兄弟と具を交換しながら味わった思い出の味、熱くてフウーフウーいって食べた味など分からなった味?普段は忘れていても、帰郷すると何はさておき訪れる、そんな望郷の味なのでしょう。


(知人から聞いた話ですが、初老の紳士が、帰郷の折、うどん屋に飛び込み「稲荷うどん」を食し、昔の味と違うとか、麺の太さが違うと言って抗議をしたという話を聞いたことがあります。)


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(金沢の「うどん」)


あの有名な作家は、金沢の「うどん」を評して、出汁は、甘めで、見た目は関西風ですが、濃さは関西と関東の中間の濃さで、ややたよりない味で、そこが持ち味だとか、「うどん」はコシがあるようでないような、いかにも前田家ゆかりの町らしい「うどん」で、たよりないところが旨さかも・・・と、また、ネギも青ネギでも白ネギでもなく、中途半端で、どっちつかずの金沢の「うどん」は、まことにその土地の気風をよく反映しているといったようなことなどとお書きになっています。



橋場の加登長(かどちょう)ハテナ
http://ameblo.jp/kanazawa-saihakken/entry-10819946949.html
上記の2011年3月4日の記事の中で、西茶屋街の「お多福」本店は今はなく、「落雁の諸江屋」になっています。また、加登長の店名については、加賀の「加」と能登の「登」そして、創業者「和田長平」の「長」からとったそうですが、初期の支店は何れも「かど家」だったそうです。)



参考文献:五木寛之著「五木寛之全紀行」、東京書籍など


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