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藩政期の一両が1円になるまで・・・①

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【藩政期の日本】
藩政期の一両とは、今の幾ら(円)になるのだろう?ガイドをはじめた頃からそんな疑問を持ち続けていますが、これが中々難問で、少し調べだしましたが、あまりにも複雑なので直ぐに挫折します。それでも聞かれると何時までも知らないでは済まされないような気がして、今も勉強、挫折の繰り返しです。



(藩政期の商家)


物の価値は、時代によって、また、物によっても違います。藩政期は本や武具などはやたらに高いし、大店の丁稚は見習いに来ているということからか給金は無いに等しく、薮入り(盆暮れの休み)に小使い程度だといわれています。また、お金の仕組みは、お米がベースで、金、銀、銭の三貨制、藩ごとで発行する藩札など随分複雑です。



 (金貨小判1枚一両)


  
 (文化文政期になると一分銀4枚で一両になっています。)


(中国人が考る諸々は、漢字もそうですが複雑にして庶民には読めないように作ってあると聞いたことがありますが、ヒガミ根性からか、お金の仕組みもわざわざ複雑にしているように思いました。少し調べてみれば、複雑に作られたのではなくて、永年の間に複雑になったというのが本当のようです。)



(フランク永井)


昭和30年代はじめのサラリーマンの平均的月給は、フランク永井の唄にも歌われた13,800円。初任給は6~8,000円、戦前になると、これまた桁が違って10円とか30円で、それが今の幾らかと言われても中々返答に困ります。それが藩政期になると今では使われてもいない金銀銅の三貨制で、しかも金貨は「両」や銀貨は「匁」や銅貨は銭で「文」で、言い方も価値も違い複雑極まりないものです。

(銭は、後に真鍮や鉄でも造られます。)


(銀貨)


(金は小判1枚の一両を基準とし、それ以下を4進法の単位で表す計数貨幣(名目貨幣)、銀は重さがそのまま貨幣としての価値である秤量貨幣銭(銅貨)は1個が1文である計数貨幣で、それぞれ、その時々の相場によって交換が行われました。元禄13年(1700)から天保13年(1842)までの幕府公定レートは金一両=銀60匁=銭4,000文でしたが、実際には時価相場で交換されていました。)




(銅貨・寛永通宝一文)


その金一両を今の価値に置き換えると、随分違うそうで、慶長期と文化文政期の価値が、3分の1もの開きが有るらしく、しかも、何時の時代においてもお米一石と同額というのですから、頭がコンガラカッテしまいます。また、日本銀行や小説「武士の家計簿」の磯田先生では、一両が人件費でみると3~40万円ぐらい、米で換算すると4万円とか言っていて、元締めの日銀や大学の先生が言うことも正しいのでしょうが、あまり明快とはいえません。NHKでは、文化文政期の時代劇ドラマでは、説明はありませんが、一両を10万円くらいで換算しているそうです。



(指し・一文94枚で100文)


そんな中で、根拠を言えと言われれば難しいのですが、私が勝手に名づけていますが「かけ蕎麦理論」がかなり妥当なように思えます。


かけ蕎麦の値段は、江戸や上方(関西)では260年ぐらい前、宝暦・明和の頃(1750年頃)までは6~8文くらい、そしてしばらくは12文~14文、幕末の物価高騰では24文になりますが、寛政の頃(1790年頃)から文化・文政・天保(1804~44)にかけて、落語”時蕎麦“にもありますが16文で、約50年間定着していたようです。(金沢は幕末も16文だったようです。



(かけ蕎麦理論?の猪山直之日記)


≪蕎麦一杯の16文を基準に現在の貨幣価値に換算する学者もいます。》

先生の解説では、駅の立ち食い蕎麦は現在250円前後が多い、これでいくと1文は15,3円ぐらい、1匁は1,660円ぐらい、1両が約99,600円ぐらいだといいます。


(銭形平次の投げ銭が15円ぐらいだったら妥当かな?日銀の30~40万円だと、1文が60~80円だとすると・・また、一文橋が60~80円だったら1日に何回も通れない。もっともガイドでは分かりやすく20円ぐらいといっています。)



(銭のイメージ写真)


これはNHKに近い!蕎麦の値段は、幕末期を除いて、江戸中期から後期、それから明治、大正も貨幣価値の換算をするのにかなり正確なのではないかと思われます。


たとえば、大正時代のかけ蕎麦の例で見ても、大正8年のかけ蕎麦は7銭、今の250円~300円の約4000分の1です。たいがいの大正8年頃の物やサービスの価格を4000倍すると、今の価格に当てはまります。


(例外も有ります。私らの経験したことでは、昔のバナナの高かったこと、正月の数の子も安かった・・・)


(つづく)


参考文献:「武士の家計簿」磯田道史著・2003・4月・株式会社新潮社発行、「猪山直之日記」石崎建冶著・2010・10月・時鐘舎発行ほか


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