【金沢→東京・目黒】
尊経閣文庫とは、加賀藩前田家第16代利為候により昭和3年(1928)4月に東京・目黒の前田家本邸内(現在目黒区駒場公園に隣接)に設立された公益法人前田育徳財団が所蔵する“書籍、文書類”と“美術工芸品”で、加賀藩5代藩主前田綱紀公の蔵書名「尊経閣蔵書」に因んで“尊経閣文庫“と名付けられました。
(尊経閣文庫の建物は、旧前田家本邸の洋館設計者である宮内省内匠寮(たくみりょう)の高橋貞太郎が設計した鉄筋コンクリート造で、現在、図書閲覧所(事務所)、書庫、貴重庫、門及び塀は国の重要文化財に指定されています。)
今は、財団法人前田育徳会が維持管理し、収蔵される作品は「日本書紀」の現存最古の写本や、藤原定家筆の「土佐日記」の写本など、国宝22件・重要文化財76件と、日本の古典文庫(図書館)の中では質的にも群を抜く“書籍・文書類”は、漢籍4,100部、和書7,500部、文書2,500点です。
(隣の旧前田家本邸・東京目黒)
“美術工芸品”は、加賀前田家伝来の絵画、工芸品、調度類、刀剣甲冑等の文化財を多数所有し、所蔵の刀剣類の中には、古来「天下五剣」の一つに数えられ、前田家第一の家宝として神格化されている三池光世(みいけみつよ)作の太刀「大典太」(おおでんた)があります。
尊経閣文庫は、閲覧出来るのは許可を受けた研究者(大学教授、助手ほか)に限られ、一般公開はされていません。書籍・文書類以外の所蔵品(美術工芸品)については、財団法人前田育徳会(東京都目黒区)に展示施設がないため、絵画、工芸品などの一部は昭和55年(1980)以来、石川県に寄託され、石川県立美術館の「前田育徳会展示室」で毎年10回以上の展示替えを繰り返しながら、「前田家の文化」を様々な角度から公開されています。
(尊経閣分館のある石川県立美術館)
(尊経閣文庫分館の展示案内看板)
また、調度品、武具類などは、金沢市の兼六園に隣接する12代藩主斉広公の正室真龍院の隠居所だった成巽閣(せいそんかく)で展示されています。
(前田育徳会旧蔵の「加越能文庫」(加賀藩に関わる文書、史料類)は一括して金沢市に寄贈し、金沢市が同市立玉川図書館近世史料館に保管整理されています。)