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千田登文と西南戦争②西郷説得の密命?

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【鹿児島】

明治10年(1877422日、千田登文(のりふみ)は総督本部詰を命じられ、次に第4旅団の伝令となります。後年であれば聯隊旗手が聯隊をはなれるということは考えられませんが、この時代は融通無碍であったのでしょう。登文中尉は旅団主力とともに、熊本から船に乗り、一気に鹿児島に上陸します。

 

 

 

鹿児島市内は西郷軍の本拠地であったため、苦戦を強いられますが、政府軍は増援部隊が到着、一方、西郷軍は人的にも経済的にもジリ貧状態となり、鹿児島県内での攻守が逆転します。登文は頭部に負傷しますが、戦闘の状況や負傷の程度はよく分かりません。

 

 

 

明治10年(1877728日、登文は中尉となり、4旅団伝令から総督本部詰に戻りますが、頭部の負傷がまだ癒えず伝令の任を解かれたのでしょう。

 

一方、西郷軍は明治10年(187791日、決起してから6ヶ月。政府軍の包囲網を破り鹿児島に戻ります。2月に決起したさいに鹿児島を出発した時の兵力は13,000、この日、鹿児島に帰りついたのはわずか400人たらずだったと伝えられています。

 

 

 

ここで、少し脱線!!

 

何回か前の拙ブログで、「長町ひるさがり―南州翁の首―」で紹介した平成8年(1996)の月刊アクタス4月号(北国新聞社発行)の石川近代史発掘・迷宮の旅の「七連隊・千田中尉西南戦争の秘話、西郷の首を拾った男」では、事実ともフィクションとつかないドラマチックな記述があります。

 

(大野敏明氏の「西郷隆盛の首を発見した男」に書かれている、ゲラの形と言われものを推敲されたものか?かなり文章が違うようです。)

 

 

●迷宮の旅「七連隊・・・・・」の概要1部引用)

明治10年(1877222日、金沢の第7聯隊に出動命令が下り、登文少尉は聯隊旗手として出陣します。以後、田原坂や人吉の戦いで敵味方入り乱れますが、戦闘が小休止状態になる56日に登文は北越戦争で旧知の第2旅団司令長官の三好軍太郎(重臣)から「君は西郷と面識があるから何とか敵陣に潜入し西郷に降伏するよう勧告してくれ」と命令され、刀一本を腰に郷士の姿で夜陰にまぎれ西郷軍の前線に至ります。

 

明け方西郷軍の歩哨に捕らえられ、待つこと1時間。西郷隆盛が現れ破顔で「命懸けできなのだな、千田君。昔と変わらぬ勇敢さだ。・・・」と言い、千田の説得に「気がはやる者ごもは承知すまい。若者があっての拙者だから」といい、さらに食い下がる千田に「山県閣下に伝えてくれ、西郷は若い者に囲まれ元気にやっているとね」そして「・・・・北越のころが懐かしい。武運があれば再会しよう。」と言ったと書かれています。

 

 

迷宮の旅「七連隊・・・・・」では、次回書く「西郷の首発見」にも、千田登文の「履歴書」とは随分違いがあります。また、田原坂の戦には第7聯隊派参加していなのに参加したように書かれていたり、各所に幾つか史実にも合わない記述が書かれています。

 

また、西郷軍が熊本から人吉に撤退しているが、もし、登文が西郷説得に動いたのはこの時期だったと思われます。それが事実だとしたら「履歴書」に書かないはずがないし、婿の今村均大将の「今村均回顧禄」にも書かれていません。どこまでが史実でどこまでがフィクションなのか、よく分かりません。

 

月刊アクタスの記述「迷宮の旅の「七連隊・千田中尉西南戦争の秘話、西郷の首を拾った男」は、作者の大戸宏氏は隣家で親しくしていた千田家に取材しゲラの形のような文章を残していたことは確かですが、ドラマチックに書かれたこの文章は、あくまでも小説として書かれたもののようです。

 

 

千田登文の「履歴書」とは、自身の生い立ちから、戊辰、西南、日清、日露の戦争状況など、また、登文の人物や考え方、そして近代陸軍を代表する軍人一家が書かれた自叙伝です。明治295月から7月まで過去をさかのぼり書かれ、7月以後は死の前年の昭和3年まで、毎年、これを書き進められたものと思われます。その和綴じ100ページほどの「履歴書」を、登文が義理の大伯父に当たる作家大野敏明氏で登文の3男で祖父にあたる北川三郎氏を題材にした平成255月の「切腹の日本史」を上梓するにあたり、「履歴書」が金沢の千田家に保管されていることを知り、読み解く許可をえて、「履歴書」の登文の強いくせ字で時間と労力を費やし読み解かれそうです。

 

 

(つづく)

 

参考文献:「西郷隆盛の首を発見した男」大野敏明著 株式会社文芸春秋 平成262発行

 


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