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作庭記と兼六園-上-⑯

【兼六園】

20、 

《原文》遣水の石をたつるにハ、底石、水切の石、つめ石、横方、水こしの石あるべし。これらはミな根をふかくいるべきとぞ。

横石は事外ニすぢかへて中ふくらに、面を長くみせしめて、左右のわきより水を落たるが、おもしろき也。ひたおもてにおちたる事もあり。

遣水谷川の様ハ、山ふたつがハざまより、きびしくながれいでたるすがたなるべし。水をちの石は、右のそばへおとしつれバ、又左のそバヘそへておとすべき也。うちゝがへうちゝがへこゝかしこに、水をしろくみすべき也。すこしひろくなりぬるところにハ、すこしたかき中石をゝきて、その左右に横石をあらしめて、中石の左右より水をながすべき也。その横石より水のはやくおつる所にむかへて、水をうけたる石をたてつれバ、白みわたりておもしろし。

 

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(大和武尊の前から七福神山へ)

 

(訳:遣水の石を立てるには、底石、水切の石、つめ石、横方、水越しの石が有るべきで、これらは皆、根を深く入れるべきです。

横石はことの外、筋交へて中をふっくらに、面を長く見せて、左右の脇より水を落ちるのが、お面白い。しかし面に落ちる事もあり。

遣水は、谷川の様で、山二つの狭間より、厳しく流れる姿を良い。水落ちの石は、右のそばへ落としつれば、また、左の傍ヘ添えて落とす。打ち違え打ち違え、ここかいしこに、水を白く見える。少し広くなるところには、少し高き中石を置き、その左右に横石をあらしめて、中石の左右より水を流すべきで。その横石より水の早く落とす所に向かへて、水を受けたる石を立てれば、白みが行き渡り面白い。)

 

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(七福神山の雪見橋)

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(木橋の下)

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(木橋の上)

兼六園では

兼六園の曲水中、亀甲橋下の水の中石(横石)または「徽軫灯籠(ことじとうろう)」付近から噴水の処に入る細流、白龍端はみんな、「鑓水谷川のさまは、山二つが狭間より厳しく流れるたる姿なるべし」に相当する処です。

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(虹橋の上)

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(虹橋したの鑓水口)

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(虹橋下の鑓水の流れ)

 

21

《原文》一説云、遣水ハそのミなもと、東北西よりいでたりといふとも、対屋あらばその中をとおして、南庭へながしいだすべし。又二棟の屋のしたをとをして、透渡殿のしたより出て池へいるゝ水、中門の前をとおす、常事也。

又池ハなくて遣水バかりあらば、南庭に野筋ごときをあらせて、それをたよりにて石ヲ立べし。

又山も野筋もなくて、平地に石をたつる、常事也。但池なき所の遣水ハ、事外ニひろくながして、庭のおもてをよくよくうすくなして、水のせゝらぎ流ヲ堂上よりミすべき也。

遣水のほとりの野筋にハ、おほきにはびこる前栽をうふべからず。桔梗、女郎、われもかう、ぎぼうし様のものをうふべし。

又遣水の瀬々にハ、横石の歯ありて、したいやなるををきて、その前にむかへ石ををけバ、そのかうべにかゝる水白みあかりて見べし。

又遣水のひろさは、地形の寛狭により、水の多少によるべし。二尺三尺四尺五尺、これミなもちゐるところ也。家も広大に水も巨多ならば、六七尺にもながすべし。

 

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(亀甲橋、木橋の下、月見橋)

 

(訳:一説云、遣水は、その源、東北から西に出でたりと云うが、対屋あらばその中を通して、南庭へ流すべし。又二棟の屋の下を通して、透渡殿の下より出て池へいるる水、中門の前を通すのが常識です。

又池は無くて遣水ばかりあれば、南庭に野筋を造り、それを頼りに石を立てる。また山も野筋も無くて、平地に石を立てるにが常識です。かつ、池なき所の遣水は、事のほか広く流して、庭のおもてをよくよく薄くして、水のせせらぎの流を堂上より見すべきで。

遣水の畔の野筋(なだらかな丘陵)には、多く蔓延る前栽を植えるべからず。桔梗(キキョウ)、女郎(オミナエシ)、吾亦紅(ワレモコウ)祇帽子(ギボウシ)様なものを植えるべし。

 

また、遣水の瀬々には、横石の歯ありて、下屋なるを置きて、その前に向かい石を置けば、

そのかうべにかかる水白みあかりて見べし。

また、鑓水の広さは地形の寛狭により、水の多少によるべし。二尺三尺四尺五尺、これ皆持ちところ也。家も広大に水も巨多ならば、六七尺にも流すべし。)

 

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(兼六園の地図に竹澤御殿の建物を書き込む)

 

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(緩やかな、七福神山下亀甲橋の流れ)

兼六園では

本項の「庭の面をよくよく薄くして、水のせせらぎの流れを堂上より見えるようする。」とあるのは、千歳台、元竹澤御殿正面、七福神山前を流れる曲水の辺りを現していて、亀甲橋の辺りに曲水は、広く浅く緩やかです。また、「下屋なるを置いて、その前に向え石を置けば、その首にかかる水、白みあかりて見ゆべし」は白龍端の谷底の向へ石を云うのでしょう。それは、白龍端の水は白く見えたからと思われます。

 

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(白瀧端下の白い流れ)

 

以上「作庭記-上-」完

 

(つづく)

 

参考文献:「兼六園全史」編輯者 兼六園全史編纂委員会・石川県公園事務所  兼六園観光協会 昭和5112月発行 「兼六園を読み解く」長山直治著 桂書房 200612月発行 「兼六園歳時記」下郷稔著・能登印刷出版部 平成53月発行 「武家屋敷寺島蔵人邸跡所蔵品録」財団法人金沢市文化財保存団 平成73月発行


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