【兼六園】
24、石の据え方。
《原文》石をバつよくたつべし。つよしといふは、ねをふかくいるべきか。但根ふかくいれたりといへども、前石をよせたてざれバ、よはくみゆ。あさくいれたれども、前石をよせつれバ、つよく見ゆるなり。これ口伝也。石をたててハ、石のもとをよくよくつきかためて、ちりバかりのすきまもあらせず、つちをこむべきなり。石のくちバかりにみたるハ、あめふれバすすがれて、つひにうつをになるべし。ほそき木をもちて、そこよりあくまでつきこむ也。
石をたつるにハ、おほくの禁忌あり。ひとつもこれを犯つれバ、あるじ常ニ病ありて、つひに命をうしなひ、所の荒廃して必鬼紙のすみかとなるべしといへり。
(栄縲山の石組み)
(訳:“石をバ、強く立つべし”は、崩れないよう深く据えるべきで、崩れないようにというのは石を深く入れてあるか、実際には堅固で根の浅い石より強いが、見た目には前石のある方が強そうにみえます。これは言い伝えです。
石を据えたならば、石の根元(土を)をよく突き固めてすき間のないようにする。上(表面)ばかり突き固めても、下(地中)にすき間があれば大雨の時など下の隙間へ水と泥が入り、石の根元がゆるんで傾く原因となります。始めから一度に土を入れず、少しずつ土を入れながら三cmぐらいの細い棒で突き固め、地面近くになってから太い棒で突き固めるのが良い。石を据える上で多くの禁止事項があり、これを、一つでも犯すと主人が病気になり、命を失い、その家が荒廃して鬼の住み処となります。)
(兼六園の石組)
25、禁忌(石の禁止事項)
一もと立たる石をふせ、もと臥る石をたつる也。かくのごときしつれバ、その石かならず霊石となりて、たたりをなすべし。
一ひらなる石のもとふせたるを、そばだて、高所よりも下所よりも、家にむかへつれバ、遠近をきらはず、たたりをなすべし。
一高さ四尺五尺になりぬる石を、丑虎方に立べからず。或ハ霊石となり、或魔縁入来のたよりとなるゆへに、その所ニ人の住することひさしからず。但未申方に三尊仏のいしをたてむかへつれバ、たたりをなさずう。魔縁いりきたらざるべし。
一家の縁より高き石を、家ちかくたつべからず。これををかしつれバ、凶事たえずして、而家主ひさしく住する事なし。但堂社ハそのハバかりなし。
(霞ヶ池の亀頭石と護岸)
(訳:1.もと立っていた石をふせたり、もと臥せていた石を立てたりすると、その石が必ず霊石となって祟りをする。
2.平盤のもと伏せていたものを立てて、高所や低所からでも、家に向けるならば、遠近(近場、遠場に)問わず祟りをする。
3.高さ四尺・五尺もある石を東北に立てはいけない。或は霊石となり、悪魔が入ってくる足がかりとなるから、その家に人が永く住みつくことができない。但し南西に三尊仏の石をたてむかえれば祟りをしない。悪魔も入ってこない。
4.家の縁よりも高い石を、家の近くに立ててはならない。これを犯したならば、凶事が絶てないし、しかも家主は長く住む事ができない。但し社寺の堂舎ならばその祟りはない。
5.三尊仏の立石を、正しく寝殿に向けては成らない。)
(親不知)
兼六園では
兼六園では、霞ヶ池護岸、親不知によくこの石組みが有ります。また、山崎山の麓に閑散と置かれた石も“地下の竜宮城“より生え出た石の如くと、兼六園全史の筆者は表現しているように、地上の現れた部分は氷山の一角の如く見える石が多い。この石は強い。
(山崎山麓の石組)
また、禁止事項として祟りを呼ぶ石のことが書かれています。”もと、伏せていた石を高所からでも近所からでも家に向けて立てるなら祟りがあり“また、”家の近くに高い石を立ててはならない。それを犯せば凶事がたえない“”高さ4・5尺もある石を東北に立ててはならないが三尊仏を立てれば祟りはない“”など、石を立てるに辺り禁止事項が書かれています。
(つづく)
参考文献:「兼六園全史」編輯者 兼六園全史編纂委員会・石川県公園事務所 兼六園観光協会 昭和51年12月発行「兼六園を読み解く」長山直治著 桂書房 2006年12月発行 「兼六園歳時記」下郷稔著・能登印刷出版部 平成5年3月発行 ほか