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作庭記と兼六園-下-⑪

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【兼六園】

36、泉事 主に泉における簀の張り方の説明。

くみ水ハ一二夜すぐれバ、くさりてくさくなり、虫のいでくるゆへに、常ニ水をばいるるなり。地上ニ高くつつをたつるにも、板をばそこへほりいるべきなり。はにをぬる次第、さきのごとし。板の外のめぐりをもほりて、はにをバいるべきなり。簀子をしく事ハ、つつの板より鼻すこしさしいづるほどにしく説あり。泉をひろくして、立板よりニ三尺水のおもへさしいで、釣殿のすのこのごとくしく説もあり。これハ泉へおるる時、したのこぐらくみえて、ものおそろしきけのしたるなり。但便宜にしやがひ、人のこのみによるべし。当時居所より高き地ニほり井あればバ、その井のふかさほりとをして、そこの水ぎはより樋をふせ出しつれバ、樋よりながれいづる水たゆる事なし。

 

(白竜端)

 

(訳:汲んだ水は一、二夜を過きると腐って臭くなり虫がわいてくるので、常に水をかえて、底の石も土もよく洗って、必要なその都.度水を入れるとよい。地上に高く筒を立てるにも、板を底へ入れる方がよい。粘土をぬることは前にのべた通りである。板の外のまわりをも掘って粘土を入れるべきである。貴子をしく事は、筒の立板よりもの先を少し出すようにしくという説がある。泉をひろくして立板より23尺水のおもへさし出で、釣殿の簀子(すのこ)のようにする説もある。これは泉へおりる時に、簀の下がこ暗く見えて、もの恐ろしい感じになるのを好んだやりかたである。但し便宜にしたがい人の好みによってよい。泉をつくろうとする時に住居より高い地に掘り井戸があるならば、その井戸の水面から、掘りとおして、その井戸の水ぎわから樋をふせ通し住居の泉に導いておけば、樋から流れ出る水が絶えるということがない。)

 

(黄門橋)

 

兼六園では

兼六園全史の「兼六園と作庭記」には、「白竜端、黄門橋付近に井戸多く有り、往昔はまだまだ多く有ったものと思う。井戸をよそおって他所への間道があったと仄聞しているが、園内に実に多くの井戸が在ってこれを使用していた様である」と書かれています。

 

元三芳庵別荘の前庭の井戸から間道を抜けるとお城に行けると云う話がありますが、どうも、入ると水が溜まっていて、抜けられなかったという、眉唾モノのお話でした。

 

(三芳庵別荘跡)

 

拙ブログ

芥川龍太郎と三芳庵別荘

https://ameblo.jp/kanazawa-saihakken/entry-12059037265.html

 

(つづく)

 

参考文献:「兼六園全史」編輯者 兼六園全史編纂委員会・石川県公園事務所  兼六園観光協会 昭和5112月発行「兼六園を読み解く」長山直治著 桂書房 200612月発行 「兼六園歳時記」下郷稔著・能登印刷出版部 平成53月発行 「図解庭師が読みとく作庭記」小埜雅章著 (株)学芸社 20085月 ほか


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