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加賀藩御料理人伝説④4代目安通と鶴包丁

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【加賀藩 金沢 江戸】

御料理頭の3代目長左衛門安信は安永8年(177912月に病没します。生年不詳のため当然ですが享年は不明です。跡継ぎの知右衛門安通は、安信の生前、明和3年(1766)御料理人に出仕し、安永9年(17805月、知右衛門安通が父の遺知80を拝領し、17年後の寛政9年(17977月、御料理頭の次の位置の役職御料理棟取になります。

 

(安通の妻は、明組与力中山源吾郎の妹で、天保3年(1832)閏11月に病死しますが、享年は不明。)

 

 

 

しかし、知右衛門安通は、妻との間に子が出来なったため、津田兵庫与力の舟木平六の3男を養子にむかえ、光顕(みつあき)といいます。苗字から推測すると親戚筋にあたると思われます。

 

天明3年(1783)亡父が残した「五節句集解」を某氏によって秘伝書として伝授されます。当時、召し出されて19年目、亡父の禄をそのまま拝領して3年目、すでに御料理人として地位が確立していたものと窺えます。

 

 

 

享和4年(1804)江戸で御料理頭に代わって年頭規式「鶴包丁」をつとめますが、病気が悪化、加賀に戻り9月に病死しています。生年不詳で享年は分かりませんが、明和3年(1766)御料理人に召し出されたとありますので、召し抱えられて38年間、15歳で召し出されたとして、享年53歳と推定すると、もう少し長生きして、ボストが空けば御料理頭になっていたかもしれません。

 

≪鶴包丁≫

古くは、第五十九代宇多天皇(貞観9年(867)~ 承平元年(931)は、国民の食生活には非常にご関心をお持ちになり、17日の七草粥を宮中行事の一つに取り入れられるなど、国民の食生活に大きな貢献を残されています。こうした料理の奨励は、「庖丁式」にも広がり殿上人や大名が賓客を我が家に招いたとき、その家の主人が心から賓客を歓待する意味で、主人自ら庖丁を取って、その庖丁ぶりを見せ、その切ったものをお抱えの料理人に調理させて賓客に供したという食生活第一の礼儀となり、特に酒宴に際しては欠かせない儀式になったと云われています。

 

 

年頭規式の包丁について書かれた「料理秘伝書」に、加賀藩での年頭規式の包丁が記されていて、はじめは「鶴」で、何故か、正徳5年(1715)から享保7年(1722)まで「鯉」となり、宝暦9年(1759)の大火で、宝暦10年(1760)から明和元年(1764)まで中止され、明和2年(1765)に再開されます。「鯉包丁」「鶴包丁」とは、人前で、箸(真魚箸)と包丁で、いろいろな形に切り分け俎板(真魚板)に並べるもので料理の型を披露する儀式です。鯉包丁は「徒然草」にも見られ、鶴包丁はこれに比べ新しく、一説では「鶴は高貴の鳥としてあがめられるようになったのは」「天正15年(1587)秀吉が大阪城で開いた茶会以降らしい」と云われていています。

(因みの前田利家公の持病は「御虫は持病にて候」とあり「鶴の汁」が原因だったらしい。)

 

 

 

加賀藩の年頭規式「鶴包丁」

「鶴」は年内前に大阪よりお取り寄せで、塩漬けのもので、年始には三面の俎板を並べ、三人の包丁人を選んで、その次第を定め「鶴」「鯛」「鯉」を包丁する。一番に「鶴」を切る、名を「千年の鶴」と云う、鶴の肉の切形を千年の形に置く、その切形は包丁家の秘伝とされています。以下「鯛」「鯉」にも秘伝がありますが、ここでは割愛します。

 

加賀藩の年頭包丁で「鶴」を第一にする意味

舟木安信の「式正膳部集解」によると、「鶴」を第一にするのは、長寿だから規式にするのは誤りといつてます。これは「五穀成就」の祈祷で、これは秘密だったらしい・・・。

 

 

舟木安信の包丁人としての考え

法華経の十方仏土中 唯有一乗法 無二亦無三 除仏方便説如 一味随衆生 性所受不同、

この文の功徳によって成仏し報恩に五穀の守護神となるのである。

頭・頂・骨・左右の羽五穀と考え、また頭・頂・骨三身とも三才とも認識する。

左右の羽を組み合わせて、陰陽和合、天下泰平、国土安穏と観念する。

五穀成就のご祈願なので、年始には禁裏、仙頭、公方、御三家、御家代々、年頭包丁規式がある。命は食にあることで、年始にまず庖厨から御祝があるのです。

 

(鶴は千年の長寿で、それにあやかろうというのではなく、五国成就を願う規式だというのである。少なくとも舟木家では、こうした認識で、鶴包丁が行われていたことがしられています。)

 

(つづく)

 

参考文献:「包丁侍舟木伝内」陶智子・綿抜豊昭著 株式会社平凡社 2013109日発行 「金沢古蹟志」第5編 森田柿園著 金沢文化協会 昭和92月発行・「加能郷土辞彙」日置謙編 金沢文化協会 昭和171月発行 「大友義左衛門(粂満)第百五十回忌を迎えて」 中屋隆秀著 東山妙泰寺(石川郷土史学会々誌第51号抜刷)平成3012月発行


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