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貨幣は国家が造るもの、たとえ瓦礫であっても行うべし①お金って?

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【江戸・勘定奉行所】

そもそも「貨幣は国家が造るもの、たとえ瓦礫であっても行うべし」とは、どのような事なのか?そして何時、誰が言った言葉なのでしょうか?ご存じの方も多いと思いますが、そもそもお金にまつわる話で、私が観光ガイドを始めて直面したのが藩政期のお金の話で、何とか知りたいものだと思っていた矢先、10年程前になりますが、古文書の先生から紹介され読んだ、金大の村井淳志先生が著した「勘定奉行荻原重秀の生涯」の中に書かれていた言葉でした。

 

 

「貨幣は国家が造るもの、たとえ瓦礫であっても行うべし」とは、「お金は国(幕府)が判子を捺せば、瓦礫(値うちのないも)でもお金になる」と云うもので、言ったのは元禄時代の幕府の勘定奉行荻原重秀です。世界ではじめて名目貨幣による現在の管理通貨制度に繋がる先駆けとなった人物だとも云えます。言い換えれば現在は常識になっているお金の本質は国(幕府)の信用に裏付けられた借用証で有ることに気付いた日本最初の、いや世界で最初の政策官僚と云えます。

 

管理通貨制度:第1次世界大戦前は、通貨価値の安定をはかるために通貨と金の兌換を保証する金本位制度基本となっていました。しかし金本位制度は為替相場の安定という対外均衡の確保を最大の目的とし、対内均衡を犠牲にしがちでした。昭和4年(1929)の世界恐慌以後、多くの国が金本位制度を廃してこの制度を採用。日本では昭和7年(1932)の兌換銀行券発行制度の改正により実質的にこの制度へ移行し、昭和17年(1942)の日本銀行法の制定で法制上も移行を果しました。)

 

 

(新井白石)

 

しかし、荻原重秀の政敵で、追い落とし失脚させた張本人である朱子学者新井白石の書いたものには、重秀については悪いことしか書かれていなくて、荻原重秀不正蓄財をしていたという話も新井白石の著書にあり、歴史教科書では荻原重秀の政策インフレの元凶ということになっていますが、経済学者の間では新井白石は経済学が全く理解されていないと書かれているそうです。

 

当時、日本が激しいデフレに見舞われたどん底で、財政再建を5代将軍綱吉から託された荻原重秀が建議して遂行された元禄の改鋳は、通貨供給量が増し日本の経済規模拡大することで元禄時代にきました。それを新井白石は、元禄の改鋳を贋金造りと称し、また「重秀は貨幣改鋳の陰で何万両のも横領した極悪人」と書いているそうですが、そんな事実確認されていません。

 

(将軍綱吉)

荻原重秀、国(幕府)に信用がある限りその幕府が発行するお金(貨幣)は保証されることに気づき、お金(貨幣)はそれ自体に価値がある“金”や“銀”などである必要はないことを確信し、現代貨幣理論(MMT200年余りも先取りした財政観念を持ちます。それまでの金銀本位実物(鉱物)貨幣から幕府の権威による名目貨幣(信用通貨)へ。そして市中に流通する通貨を増やすことが可能になり、幕府の財政をこれ以上圧迫することなくデフレを回避することが出来たのです。荻原重秀は元禄8年(1695)、慶長金・慶長銀を改鋳して金銀の含有率を減らした元禄金・元禄銀を作ります。)

 

現代貨幣理論(MMTとは、国定信用貨幣論といわれ貨幣の成り立ちや貨幣の定義に関する学説の1つで、ケインズも提唱し、高橋是清が昭和恐慌で実行した貨幣論として有名で、商品貨幣論とはあらゆる面で正反対の主張をしています。

 

 

 

ところが、新井白石は後に荻原重秀の追い落としを何度も試み、ついに重秀を失脚させることに成功。さっそく新井白石小判の金の含有率を元の慶長小判の水準に戻しますが、当然、経済デフレに逆戻りします。それでも歴史教科書では正徳から享保年間の深刻なデフレにも関わらず白石の政治は世直しであり善政という記述されているそうです。

 

もっともデフレ経済が続いていたなら元禄文化などは生まれなかった。また、人々の消費が生活必需品に限られていたなら、華やかな文化が花開くということは無理で、歴史書や歴史教科書では、突然元禄文化が生まれた印象を受けましが、背景には町人の経済活動が活発になり、農民も消費を増やしたという経済的裏付けが必要で、荻原重秀の通貨増発政策抜きでは、元禄文化の出現しなかったのではないと思われます。

 

拙ブログ

藩政期の一両が1円になるまで・・・②

https://ameblo.jp/kanazawa-saihakken/entry-12103346644.html

5年程前にまでシリーズで書いたものです)

 

上記のように以前にも荻原重秀について書きましたが、今回は、近年話題の「現代貨幣理論」「新型コロナ対策」による財政拡大など共通点が窺え、視点を変えて再度勉強をやり直し、経済の何たるかを、そして現代に於ける重秀白石は?居るのか居ないのかも突き止めようと思っていますが、何しろ苦手の経済のお話ですから如何なることやら・・・・。

 

(つづく)

 

参考文献:「勘定奉行荻原重秀の生涯」村井淳志著 集英社新書 20073月発行・「お金」の日本史 8182」井沢元彦著 北國新聞夕刊202051415日掲載・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)など

 


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