【江戸・東京・明石】
新型コロナウイルス感染拡大に伴い景気の悪化から、日本もアメリカでも90年前の大恐慌と同じく、デフレ圧力が強まり、インフレ懸念もないので通貨発行益が財源になるプリンティング・マネー(紙幣)政策が進められています。先日、地元の新聞の小見出しに「日米とも紙幣を刷りまくれ!!」という記事が目に付き読んでみると、「・・・日米とも巨額の財政出動があるので、財政問題になるという論調もあるが、そうした意見には、プリンティング・マネー(紙幣)を無視して、財源を「血税」と勘違いしている。財源は税金ではなく通貨発行益なので、心配なのはインフレであるが、当面その心配は少ない。・・・・」と元内閣参事官で大学教授の高橋洋一氏がお書きになっています。
(森永康平著「MMTが日本を救う」)
(財源を「血税」と勘違いとは:例えば2019度の日本では徴税は約63兆円で税金では歳出が賄えず、国債発行で約33兆円とその他の収入約7兆円で賄っています。ですから税金ですべてという訳ではないので「血税」だけとは言いがたい。この国債を赤字国債と云われ、政府はこれが借金だから増えれば日本は破綻すると云っていますが、それは大嘘で、実際は政府の定期預金のようなもので、通貨発行益が増加することで、日本は自国通貨で変動相場制の国なので財政破綻しないらしく、最近、現代貨幣理論(MMT)で明らかになり、ご存じの方も多くなりました。通貨発行益とは、日銀発行の銀行券と引き換えに保有する国債から発生する収入です。)
(高橋洋一氏)
「経世済民」という言葉は、中国の古典(孔子以前の王の政事)の中にある言葉が起源で「世を経(おさ)め民を済(すく)う」ことを意味し「政治学」「政治・政策思想」「経済学」「経済思想」など広範な領域を含んでいます。現在、「経済」という言葉は、主として英語の「Economyエコノミー」の訳語として使われていて本来の言葉の意味とは異なりますが、含意は現代の「経済学」ではほとんど顧みられることがなくなっています。
(柳田國男氏)
そうは云っても現代経済学には、経世済民の精神が日本から完全に消えたわけではなく、例えば柳田國男氏は貧困にあえぐ農民達を救うために立ち上げた自らの民俗学を「経世済民の学」と定義し、最近でも、4月20日閣議決定した国の新型コロナの緊急支援対策として10万円の支給に先立ち、4月16日に明石市の市長は「特に困っている人に手を差し伸べることが急務。スピード感を持って対応したい」と強調し、「国や県による対応も期待したいが、今はそれを待っていられない状況」と述べ、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急対策を盛り込んだ2020年度一般会計補正予算案を明らかにした等は経世在民が云う“民を救う”の現代版と云えないでしょうか・・・!!
(国会議事堂)
(特別定額給付金の概要によると、施策の目的は、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、・・・・・・国難を克服しなければならない」と示され、このため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う。事業費(令和2年度補正予算(第1号)計上額)12兆8,802億93百万円給付事業費 12兆7,344億14百万円事務費 1,458億79百万円)明石市:新型コロナ対策で感染症対策局を新設し、補正総額は6億900万円。財政基金を取り崩して対応する。収入が減少し、生活維持が困難な世帯へ貸し付ける生活資金の増額、子どもが休校中でも学べる環境を整える家庭学習支援システムの導入等。令和2年4月16日神戸新聞より)
新型コロナウイルスで直面し、私も日増しに実感が深まっていましたが、今の日本では多くの民がデフレ不況のために苦しんでいて、給料は下がり、失業者が増え、若者の就職率は低迷する一方で、多くの企業は倒産し自殺者数は大幅に増加しているそうです。今こそ、プライマリーバランスを気にしながら、しぶしぶ財政出動するのではなく、本格的に、アメリカ並の財政出動が望まれます。
(大多数のプロの経済学者が「財政出動のような愚かな経済政策はすべきでない」と主張していることが、日本で財政出動ができない重要な原因の一つになっているのは事実です。その典型が「マンデル・フレミングの法則」で1999年にノーベル賞を受賞した理論で「現代では財政出動をしても経済効果はない」ということを“証明”したことになっている理論です。多くのプロの経済学者達はこの理論を持ち出して「財政出動などやめなさい」と口にするのです。よくよく吟味してみるとこの理論は「インフレ」であることが前提となっており、今の様な「デフレ」には全く通用しないものです。)
これが現実であれば、学者の知的遊びで今の経済が動いているのなら、多くの苦しんでいる人々は浮かばれません。経済学とは「経世済民の学」であるならばねば、ノーベル賞奪取を至上目標とする学者の知的な遊であってはいけない!!
(ケインズ博士)
しかし「経済理論」の全てが無用とはいえないが、私達が経済理論を用いる際に忘れてならないのは、その理論を口にする先生の言葉や心に、柳田國男氏やケインズ博士が携えていた「経世済民の精神」が肝に銘じているかを見極め、それが見えない先生の言葉は、無視すればいいということになります。
(荻生徂徠)
≪荻生徂徠≫
江戸中期の古文辞学の創始者で、当初は、朱子学を学び、朱子学の間違いは四書五経の誤読にあるとして、孔子以前の優れた王から学び独自の学問体系として古学を確立しました。荻生徂徠は、実証的な文献学としての古文辞学を樹立し、後に経世論(日本で「経世済民」のために立案された諸論策)が本格的に生まれます。また、朱子学を「憶測にもとづく虚妄の説にすぎない」と喝破、朱子学に立脚した古典解釈を批判しました。
(荻生徂徠の思想的特徴は、孔子の儒学(朱子学)では、天下を安泰にするには人々が道徳的修養することにあるというが、荻生徂徠の学問は、支配者側の学問で、人民の生活向上は、人為的に作られるもので、「世を治めて民を救う」経世済民の学としてとらえ、内面的道徳よりも政治思想に重点を置いていることで、道徳論を中心としたこれまでの儒学に対して、公の秩序を目的とする政治の独自性と価値を主張します。また、詩文の世界にも古文辞学を適用し、活発な文学活動にも知られています。徂徠学系には、太宰春台、加賀藩に関係深い海保青陵・本多利明などがいます。)
(つづく)
参考文献:「勘定奉行荻原重秀の生涯」村井淳志著 集英社新書 2007年3月発行・「勘定奉行の江戸時代」藤田覚著 株式会社筑摩書房 2018年2月発行・「MMTが日本を救う」森永康平著 (株)宝島社 2020年6月24日・フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」
引用:日刊建設工業新聞 所論緒論2011年 2月10日現実の政策は「経済学」でなく「経世済民の学」にこそ基づくべし 京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻 教授 藤井 聡氏・「日本の未来を考える勉強会」一よくわかるMMT(現代貨幣理論)解説ー平成31年4月22日中野 剛志氏